
早期解約控除(そうきかいやくこうじょ)について教えて下さい。
生命保険会社が潰れた(破綻した)場合、その後の手続きのすすめ方に二つのケースが存在します。
1. 他の保険会社が買収するケース
一つ目が他の保険会社が買収するケースです。生命保険会社が破綻した場合、全く別の保険会社に買収されることがほとんどです。他の保険会社がこぞって破綻した保険会社を買収したがる理由として、保険を募集する際にかかる費用をほとんどかけることなく、大きな契約を獲得することができる点が挙げられます。この場合、自分自身が契約している保険内容は変わらずに、保険会社名だけが変わります。例外として、過去に高利回りを約束していた保険商品だけは、再度、現実的な利回りに利率が引き直されて解約返戻金や保険金額が下がってしまう場合があります。これを予定利率の引き直しといいます。
2. 買収先の保険会社が見つからないケース
もう一つが、買収先の保険会社が見つからないケースです。この場合、契約者のセーフティーネットである生命保険契約者保護機構が引き受け保険会社を設立します。お客様が契約している保険商品の解約返戻金は、その全てが保険会社によって運用されているわけではありません。実際は、解約返戻金の9割相当までは、この保護機構に供託しておく必要があり、運用にまわっているのは残りの金額です。買収先の保険会社が見つからない場合でも、保護機構が設立する引き受け保険会社によって解約返戻金の9割相当までが守られます。これが保険会社が破綻しても、解約返戻金の9割相当までは守られるといわれるゆえんです。
今回ご質問を頂きました早期解約控除は、前者の他の保険会社が買収するケースで適用されることがあります。
保険会社が破綻した場合、次の買収先保険会社が決まるまで、混乱を避ける意味もあり、契約はいったん凍結されてしまうことがほとんどです。凍結されているので、解約などの手続きもストップされてしまう場合があります。買収先の保険会社が決まるまでにあまり時間がかからない場合もありますし、長い場合は1年以上経過したあとに新しい保険会社に買収される場合もあります。この期間、保険契約は凍結されてしまいます。
買収先の保険会社が決まると保険契約の凍結がとかれますので、多くの保険契約が解約へ向かうのが自然な流れです。ただし、これでは、新しい買収先企業は円滑に保険事業を運営することはできません。ここで早期解約控除が登場します。
早期解約控除の額は、ケースバイケースですが、例えば10年間の早期解約控除がつく場合を想定してみましょう。買収先決定直後に解約すると解約返戻金の20%を減額とし(ペナルティがつき)、翌年以降1年につきペナルティが2%ずつ下がっていき、10年後には早期解約控除がなくなり、契約当初(あるいは早期解約控除のない)解約返戻金に戻ります。3年後に解約をすれば2%×3年=6%のペナルティ削減で、全体のペナルティ(早期解約控除)は14%という具合です。
解約予定時期まで時間があり、解約返戻金がなだらかに上がっていくタイプの長期平準定期保険や法人向けがん保険を契約している場合は、買収先保険会社が決まったからといって安易に解約するのではなく、早期解約控除が少なくなるまで契約を続けることでペナルティを避けることができます。逓増定期保険など、解約予定時期まで時間がない場合や、解約返戻金のピークを迎えてしまうような商品は、早期解約控除があっても早期に解約して損切りをしてしまうことが得策である場合もあります。
現在、契約している保険商品に早期解約控除がついている場合、慎重に検討し、対策を考えることをおすすめいたします。